日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

三つ葉のクローバー「創業100周年」

粂田佳幸
彌榮自動車株式会社 取締役社長
粂田佳幸

当社の源流を示す「営業用自動車鑑札 第一号」は、日本自動車史の黎明期の史料としても登場します。この木製の鑑札が交付されたのは、街に人力車が溢れていた頃-1917(大正6)年5月10日。その後、京都の全ハイヤー会社を戦時統合し、現在のヤサカの母体となりました。創業者の粂田幸次郎が本格的にハイヤー業をスタートさせて本年で100周年を迎えます。
烏丸通などの道路拡築や電話の普及など近代京都の胎動とともにヤサカは誕生しました。現在の京都は日本を代表する都市として世界中から観光客が訪れています。私どもは地元の皆さまに親しまれる身近な交通機関であるとともに、日本の魅力をお伝えする役割も担っています。また、次の時代に向けた取り組みも始動しています。京都で先駆けて導入したスマートフォンによるタクシー自動配車など、高度道路交通システム(ITS)技術や「クルマ×モノのインターネット(IoT)」の積極的な活用を模索して、便利に利用いただくための進化を続けています。
シンボルマーク「三つ葉のクローバー」は「安全・快適・信頼」を意味しています。「安全」運転に徹し、お客さまに「快適」にご乗車いただく。この毎日の積み重ねが「信頼」となる。これこそが進取の気風溢れる京都で育まれた「ヤサカの精神」であり、時代を超えた未来へのキーワードであると確信しています。

彌榮自動車株式会社
京都市下京区中堂寺櫛笥町1番地/Tel.075-841-6261
http://www.yasaka.jp/

和の凝縮空間。食文化を継承する料亭の役割

佐竹力総
株式会社美濃吉 代表取締役社長
佐竹力総

おかげさまで美濃吉は本年、創業300周年を迎えます。その起源は、享保元(1716)年、秋田佐竹の流れをくむ佐竹十郎兵衛が美濃大垣から京へ出て、三条河原で腰掛茶屋を営んだことに始まります。後に、京都所司代の認可を得て「川魚生洲八軒」に連なりましたが、今日では現存する唯一の店となって十代、300年の永きにわたり、京料理の歴史とともに商いをさせていただいております。
節目の年を迎えるにあたり、これまで賜りましたすべての「ご縁」に心より感謝申し上げます。以前に「私の料亭デビューは0歳のときです。記憶にありませんが…」と言われたことがあります。この方は「帯祝い」の戌の日にご家族がお祝いをされました。ですから、ご本人はまだお母さまのおなかの中でした。料亭は敷居が高いと思われがちですが、お食い初めやお宮参り、七五三、婚礼、法事などの行事、人生の節目に行われる「通過儀礼」を通じて身近な存在となっていくのです。
「和食は育ち合いの文化」といわれています。家族が集まるとき、料亭がその折々にふさわしい料理を用意し、和食を通じて人々は日本文化を体感してきたのでした。和食は、日本人の心のふるさとであり、料亭は「食と伝統のテーマパーク」でもあるのです。
創業300年を迎える美濃吉は、これからも皆さまの人生の節目に喜びの場を提供し、お客さまとともに美しい日本の食文化を未来へ伝えて行きたいと願っています。

株式会社 美濃吉
京都市東山区三条通白川橋東入ル3丁目夷町166/Tel.075-751-8881
http://www.minokichi.co.jp/

「転識得智」創意工夫するは人間の妙

田中典彦
佛教大学 学長
田中典彦

「お正月には凧あげて、独楽を回して遊びましょ」。最近はあまり見ることができなくなってしまいました。日本では平安時代に始められたとされています。独特な竹ひごで作られた奴凧などが日本の伝統的な遊び文化として受け継がれているのです。
子どもの頃、なぜか友の凧がうまく高く揚がっているのに、僕のはすぐに切り込むように回りながら落っこちてくるのです。足を長くしたり短くしたりしてもうまく揚がらなかった。父に相談すると、「同じように作ってあっても同じではないよ、一つ一つ違うんだよ」「凧はバランスをとらないと」と教えてくれた。興味が湧いたので凧のことを勉強して、いろいろな凧を作って飛ばしたのを思い出します。いったん仕組みを理解することができれば、楽しみながら工夫ができるものです。
知り得た知識から新たなものを考え出そうと、いろいろと方法を求めることが創意工夫なのです。知識からアイデアへ、そしてそれを実現してゆける力を持つのも人間の妙といえるでしょう。
知識が生きる力へと転換されるとき、自らの生きる道を切り開くものとなり、人類のよき未来を創造してゆくものとなります。仏教に基づいて「転識得智」を身に付けていただける大学を目指しています。

佛教大学
京都市北区紫野北花ノ坊町96/Tel.075-491-2141
http://www.bukkyo-u.ac.jp/

「挑戦」

塚本能交
株式会社ワコールホールディングス 代表取締役社長
塚本能交

1987年、創業者である父・塚本幸一の後を継いで社長に就任し、今年で30年を迎えます。多くのお客さまとお得意先さま、そして社員に支えられた賜物ただと深く感謝しております。
あれから30年、当社は引き続き女性向けインナーを中心とした製品やサービスの品質に磨きをかけつつ、より多くのお客さまにご満足いただけるよう、事業を展開してまいりました。
今、時代は大きく変化しています。
ご承知の通り、為替の変動により業界によっては恩恵を受けた企業もございますが、世界経済のグローバル化が進む中で、われわれを取り巻く環境はますます予断を許さない状況になっております。
また、日本の国内だけをみても、少子高齢化という構造的な課題や国内経済を低迷させる原因となってきたデフレなど難題が山積しております。このような国内外の環境において、事業を展開する国や地域を広げ、事業領域を拡張していかなければ、今後、企業の成長は望めないと思います。
当社の目標でもある「世の女性を美しくする」ことに貢献し続けるためには、時代の変化に対応しながら、チャンスを捉え、挑み続けなければなりません。世界中のより多くの人に、より美しくなっていただくために、積極的に「挑戦」し続ける一年にしたいと考えております。

株式会社 ワコールホールディングス
京都市南区吉祥院中島町29/Tel.075-682-5111
http://www.wacoal.jp/

ロームグループと社会の循環的な成長

澤村諭
ローム株式会社 代表取締役社長
澤村諭

さまざまな社会的な課題を解決しつつ、企業活動を実践していくCSV(共通価値の創造)という考え方が、企業価値創造のアプローチとして一般的になってきました。社員一人ひとりが創業以来受け継がれた「企業目的」「経営基本方針」を実践し、革新的な商品開発や高品質なモノづくりを進めることは、お客さま満足度(CS)を向上させるとともに社会への貢献につながると考えています。そして、そのことが、社員の自信と誇りを高める良循環を生み出し、新たな挑戦の原動力にもなります。
ロームは、製品を通じて社会に貢献するため、省エネ、安全・快適、小型化をキーワードに革新的な製品を供給してまいりました。このCSV活動をさらに加速するために、三つのECO「ECO Earth」「ECO Energy」「ECO Life」を定めています。
「ECO Earth」は、創業以来、大切に守り続けている「品質第一」の追求によって、あらゆるムダを省いた効率的なモノづくりを行い、環境負荷を極限まで低減する取り組みです。「ECO Energy」は、省エネルギーを実現する製品を提供する取り組みです。「ECO Life」は、安心、安全で快適かつスマートな社会の実現をサポートする取り組みです。
このような取り組みを通じて、今後もステークホルダーの皆さまのご期待に応えられる企業を目指してまいります。

ローム株式会社
京都市右京区西院溝崎町21/Tel.075-311-2121
http://www.rohm.co.jp

多様性はイノベーションの源泉

長田豊臣
学校法人立命館 理事長
長田豊臣

立命館は、1869年、近代日本の代表的政治家である西園寺公望が、私塾「立命館」を創設したことに始まります。その精神を引き継ぎ、1900年、中川小十郎が京都法政学校を開き、建学の精神として「自由と清新」、つまり「フリーダムとイノベーション」を掲げました。この精神こそ、今日に至る立命館の改革の原点です。
創造性は多様性のなかから生まれるものであり、その多様性を有するのが私学であると考えています。立命館大学における教育研究をはじめ、京都・滋賀・北海道に所在する各付属校では、日本の初等・中等教育をリードする画期的なグローバル教育・理数教育や大学教育との連携を通して、生徒・児童の「未来を拓く力」を育んでいます。また、大分の立命館アジア太平洋大学(APU)では学生の約半数が留学生という環境のなか、極めてユニークな国際教育を展開しています。京都そして日本各地から、世界を舞台に活躍する人材を育てていきたいと考えています。
若かりし頃をフランスで過ごした西園寺は、「自由主義」と「国際主義」を標榜し、日本が世界の中で十全に役割を発揮するためには、何をすべきか、問い続けました。「立命館は、日本・アジア、そして世界の未来のために何ができるのか」を常に考えながら、今年も誠心誠意、学園創造に邁進いたします。

学校法人 立命館
京都市中京区西ノ京朱雀町1/Tel.075-813-8300
http://www.ritsumei.ac.jp/