日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

「忙中有閑」

湯淺圭一
ジーク株式会社 代表取締役社長
湯淺圭一

高度に情報化された社会は、私たちにこの上もなく便利な世界を創出してくれました。
インターネットの登場後、情報通信技術の進歩は社会面だけではなく家庭生活の面においてもさまざまな恩恵を与えてくれています。ネットワーク社会は飛躍的な時間の短縮化を生み、コンピューター技術の進展により情報は瞬時に伝達され、お金の流れも高速化して来ました。
このようにあっという間に人も、ものも、お金も、情報も飛び交っていく便利な時代ではありますが、ますます忙しさはとどまる所を知らず、人は極めて忙しい時代を生きているように思います。
「忙中閑(ぼうちゅうかん)あり」という言葉があります。ここでいう「閑」とは、暇があるという意味ではなく、静かな状態「静寂」を意味し、忙しい中にも静かにゆったりとした時間、友人や家族と過ごす時間、文化や芸術にいそしむ時間、そんな時間が大切なことを意味していると思っています。忙中に掴(つか)む「閑」を大事にし、できれば余裕のある時間を過ごせたらと思っております。

ジーク株式会社
京都市南区吉祥院新田弐ノ段町33/Tel.075-681-0511(代)
http://www.zycc.co.jp/

京都、世界一流の食文化の交差点

続木 創
株式会社進々堂 代表取締役社長
続木 創

京都で商売ができるって、本当に恵まれたことだなぁとつくづく思います。それは京都には上質のお客さまが多いからです。いわゆる「富裕層」を必ずしも指すのではありません。本物に敏感で、良いものの良さをきちっと分かってくださるお客さまが、これほどたくさん住んでおられる街って、日本中探しても京都以外には、それほどないのではないでしょうか。
京都はまた世界一流の食文化の交差点でもあります。ユネスコの無形文化遺産になった和食はもちろん、フランス料理をはじめとする西洋の食文化においても、質の高いお店がこの狭い盆地にひしめいて世界中から京都を訪れる食通を唸らせています。この多様性こそが京都の街の真の魅力なのではないでしょうか。和洋を問わず、上質のお客さまと良いお店が互いに磨き合い高め合うことで、他の街には真似のできない、京都ならではの食の世界が形成されてきたのだと思います。
そんなダイナミックな京都の食のますますの発展に、西洋の食文化の一端を担うパン屋として少しでも貢献したい、世界中から京都を訪れるお客さまに「京都の人たちって、おいしいパンを食べてるんだなぁ」と思っていただきたい。こんな志を持って今年もパン造りに邁進(まいしん)してまいります。

株式会社 進々堂
京都市中京区竹屋町通寺町東入る藤木町33/Tel.075-221-0056
http://www.shinshindo.jp/

健康寿命が伸びれば人口減少社会も怖くはない

田邉卓爾
親友会グループ医療法人知音会 理事長
田邉卓爾

日本は人口減少社会に突入しました。50年後には、今よりも4千万人も減って8700万人になるという将来推計が発表されています。この数字はかなりの確率で当たると思われます。特に問題視されているのは、65歳以上の老年人口が約4割を占めることと、これが経済活動や社会の活力を削ぐということです。
昨年、政府は50年後に1億人の人口維持を目指す方針を決定しました。予測よりも1300万人増やさねばならなくなりますが、よほど思い切った政策を実行しない限り人口の減少をストップさせるのは容易ではありません。
私は人口が大幅に減ったとしても、健康寿命が一段と伸びて、元気で生涯働ける高齢者が増え、女性の活躍が促進され安心して生活できる社会になれば、国力は維持できると楽観視しています。とりわけ「自分の健康は自分で守る」「家族の健康は家族で守る」という自覚と責任を高めて実践することが大切です。家族ぐるみで助け合い、より良い生活習慣を確立し、生涯にわたって自立できるようにしなければなりません。
親友会グループは、予防医学のスペシャリストとして、病気の「早期発見・早期治療」に貢献してまいりますが、病気にならないのが一番です。せっかくの人生、長く健康で働き、いきいきと幸せに過ごしましょう。

親友会グループ 医療法人 知音会
京都市中京区西ノ京下合町11 御池クリニック/Tel.075-823-3000
http://www.shin-yu-kai.jp/

グローバル人財に求められる「力」

佐々木喜一
成基コミュニティグループ 代表兼CEO
佐々木喜一

私が2013年より委員として任命されております「教育再生実行会議」では、グローバル社会で活躍する「人財」を育成するための議論が交わされ、そのための改革を多数提言してまいりました。
グローバル人財に求められる力として、まず英語をはじめとした語学力、そして自分の志やアイデンティティー、また自国の文化や歴史などを理解し、話すことができる力、さらに自国以外の異文化や、自分の専門以外の異分野について理解し、受け入れる力が挙げられます。それらの力が身に付くことで、「リーダーシップ」「創造性」「イノベーション(革新)」「豊かな感性」が養われます。今後さまざまな国の人たちと交流し、協力し合いながら、新しい価値を創造し、課題解決を図っていく機会が今以上に多くなっていくことでしょう。その中を逞しく、しなやかに生きていくためにはこれらの力が必要なのです。
そして何よりも、その力を身に付けるための大きな土台となるのが高い「志」であり、自信や自負心、自己肯定感や自尊心といった自尊感情です。自分のことを前向きに捉えることが、日本人として、グローバル人財として活躍していくための第一歩であるはずです。
私たちは、これらの力を育むために、今後も民間教育機関だからこそできる新しく、これからの社会に必要な取り組みを行ってまいります。どうぞご期待ください。

成基コミュニティグループ
京都市中京区烏丸通二条上ル蒔絵屋町265-2 SCGビル/Tel.075-256-8800
http://www.seiki.co.jp/

インテグリティを貫く人材の育成

田中誠二
学校法人大和学園 理事長
田中誠二

京都は、観光客数過去最高値の更新や、米国旅行雑誌「トラベル・アンド・レジャー」の人気都市ランキングで世界1位となるなど、今世界から大変注目を浴びています。このことは、私たちが大切に伝え育んできたおもてなしの心や継承すべき伝統を守りつつ、その時代に応じた革新を行う清新の志、進取の気性を重んじる心が、高く評価されたものと誇りに思うところです。
一方、職業教育に携わる一人として若者を取り巻く環境に目を向けますと、日本青少年研究所の調査では、自尊心を持った高校生が諸外国に比べて圧倒的に少ないという結果が出ています。30年前と比較しても、「自分が駄目な人間だと思う」と答えた割合が3倍になるなど、自信を持つ若者が減りつつあります。
今後の高等教育機関では、知識や技術の習得だけではなく、学生が自らの人生を設計するライフデザイン力や自尊心を醸成させる教育が必要なのではないでしょうか。
また併せて、規範やモラルを守り抜き、正しく考え行動する「インテグリティ(誠実性)」を貫く人材の育成にも、一層注力していきたいと考えています。
そして、人に奉仕し、人をもてなし、人を幸せにする「ホスピタリティ」の精神を兼ね備えた中核的専門人材を社会に輩出することで、京都ひいては日本の持続可能な発展に微力ながら貢献したいと思います。

学校法人 大和学園
京都市中京区河原町三条上ル/Tel.075-241-0891
http://www.taiwa.ac.jp/

「そだてよう、未来の種」

瀧井傳一
タキイ種苗株式会社 代表取締役社長
瀧井傳一

私たちが日々食する野菜や美しい花々。種苗業はその基である種を扱うことを生業(なりわい)としています。
本年、当社は創業180年を迎えます。1835(天保6)年の創業から継承してきた企業理念に、「より良い種子の創造と安定供給」があります。通常、一つの品種をつくるには約10年という時間を要し、10年先、20年先にどのようなものが求められ、世の中に受け入れられていくのかを予測し、それに向かって一段ずつ積み上げていく必要があります。人々や社会の要望に応えるべく夢のある優良品種を創造するとともに、その種を安定的に供給し続けることが当社の社会的責任であり、種屋として最も大事な「信頼」「信用」につながります。
古来より、農業は、ゆるやかで地道な作業の積み重ねによって豊かな実りを獲得する営みであり、農業は日本人の精神性や文化を育む上で大きな役割を果たしてきました。スピード優先の時代だからこそ、四季の移ろいを感じ、一つ一つ小さな歩みを大切にする、日本人の根底に流れる心が以前にも増して重要になるのではないでしょうか。
豊かな食文化と潤いのある生活の実現のために、豊富な遺伝資源と確かな技術、そして、農業への深い愛情をもって、タキイはこれからも「未来の種」を育てていきたいと考えています。

タキイ種苗株式会社
京都市下京区梅小路通猪熊東入/Tel.075-365-0123
http://www.takii.co.jp/

地域の未来を支える

武田隆久
武田病院グループ 理事長
武田隆久

京都府はその医療レベルだけではなく、医師数・看護師数を見ても、全国的に恵まれた環境といわれています。京都市と乙訓地域は一つの“医療圏”として扱われますが、人口約160万人に対し、医師は6千人超。看護師は実に1万5千人に迫ります。
同規模の例を見れば、横浜北部の医療圏が人口150万人で医師は3430人、看護師は6700人となっています。
数字の上からは、京都側が倍も充実しているかのように見えますが、実際には横浜北部の医師・看護師数は、神奈川県内ではわずか13~15%程度でしかなく、これに隣接する地域にも多くの医師・看護師がいるのです。
これに対し京都府は、医師・看護師の実に7割前後が京都市・乙訓の医療圏に集中しており、他の地域は非常に少なく、特に南北両端に位置する山城南・丹後医療圏では、わずか2~4%でしかありません。
当グループは、この過密・過疎地域の両方で医療サービスを提供しておりますが、過疎高齢化が際立って進行する地域では、病院の支えが不可欠だと感じます。さらに、次世代を担う「若者の定住を促進させる」という観点からも、病院がもたらす「安心して暮らせる環境」と「雇用」が大きな力を発揮することを経験しました。地域社会との共存・発展に取り組む一員として、地域の未来を支えるお手伝いをさせていただきたいと考えております。

武田病院グループ
京都市下京区塩小路通西洞院東入東塩小路町841-5 /Tel.075-361-1351
http://www.takedahp.or.jp/