日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

「ふとん着て 寝たる姿や 東山」

大河内徹心
株式会社京都西川 代表取締役社長
大河内徹心

江戸時代の俳人服部嵐雪が詠んだ句のように、女性がゆったり寝ているような優雅で柔和な東山の山容を、私たちは朝に夕に眺めることができます。
京都には長い歴史と伝統の中で培ってきた文化や創作物が数多くあります。国内外で次々と作り出される目新しい工業製品と比較しても、京都の創作物が存在感を保ち続ける理由は、歴史と文化が築き上げた京都流の様式美がベースにあるからでしょう。そしてこの様式美こそが日本人の心にゆったりと横たわる美意識だと思います。
これらの文化や創作物も幾度かの変化を遂げます。小さな変化もあれば、革新的な大掛かりな変革の場合もあります。いわば伝統を継承しながら革新を続け、京都人の厳しい審美眼をクリアしながら生き残り続ける創作物こそ、「ほんまもん」の京都ブランドを冠することができるのでしょう。
明治維新後、明治・大正・昭和・平成と時代が足早に変遷し、わずか150年の間に市民の生活スタイルが大きく様変わりしました。近代的な布団もこの変化の中から産み出された製品です。
「京都発、ふとんの文化」。いつの時代もお客さまにゆったりとした安らぎを与える「ほんまもんのふとん」を作り続けたいと思います。

株式会社 京都西川
京都市下京区河原町通松原上る幸竹町385
http://www.kyoto-nishikawa.co.jp

伝統は未来のために

平岩孝一郎
株式会社京都ホテル 代表取締役社長
平岩孝一郎

平素は京都ホテルグループをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
1888年に「常盤ホテル」として創業したホテルは、127年にわたり国内外の賓客を迎えてまいりました。明治のころより、京都は外国人観光客の多い地であったようです。歴史的な建造物や美しい自然景観もさることながら、守り継がれてきた伝統文化が色あせることなく、京の暮らしに息づいている様子に引きつけられたのではないでしょうか。こうした生きた歴史に触れられるということは、時代を経てもなお、訪れる人々を魅了してやみません。
訪日外国人客数が過去最多となる中で、ますます京都への期待と関心の高まりを感じております。オリンピックに向けて増加する外国人旅行者のニーズに対応するため、京都ホテルオークラの中国料理レストラン「桃李」を全面リニューアルし、バラエティーに富んだメニューが楽しめる朝食ビュッフェをスタートいたしました。また、新町姉小路には、町家風情を残すカフェ・バー「新町1888」を開店し、新たな観光の拠点としてご利用いただいております。
京都ホテルグループは、京都で現存する最も歴史あるホテルとして、お客さまとの出会いにより育まれてきた伝統を大切にするとともに、新しい試みを通じて、未来へと受け継いでまいります。

株式会社 京都ホテル
京都市中京区河原町通二条南入一之船入町537-4/Tel.075-211-5111
http://www.kyotohotel.co.jp/

地域のお客さまを理解し、夢を共有する

横山良範
キリンビールマーケティング株式会社 京滋支社 支社長
横山良範

平素はキリングループ商品をご愛飲いただき、誠にありがとうございます。
2014年は日本の祭りを代表する京都の祇園祭において、山鉾連合会をはじめとする関係者の皆さまのご尽力もあり、「後祭」が50年ぶりの復活を果たしたことが大きな話題となりました。祭りの維持継承に賛同し、文化支援キャンペーンの協賛社として名を連ねる当社としても、大変意義深い一年でした。
また、神事としての「神輿渡御(みこしとぎょ)」を応援させていただくことで、京都の歴史の奥深さに触れることのできた一年でもありました。
当社のお客さまが暮らす京都・滋賀の地で長年育まれた独自の文化を、深く理解し夢を共有することが、お客さまに喜んでいただくことだと思っております。
新たに迎えた2015年も、祇園祭、亀岡・近江八幡でのビール大麦契約栽培、地元産品の応援などを通じて、地域のお客さまに愛着を持っていただける会社を目指してまいります。
最後に、弊社の滋賀工場はご当地のビール工場として、京都・滋賀のお客さまにおいしいビールをお届けしております。ぜひとも「滋賀工場謹製の一番搾り」を地元のビールと思って、ご愛飲いただきますようお願いいたします。本年が皆さまにとりまして、素晴らしい一年となりますよう祈念申し上げます。

キリンビールマーケティング株式会社
京滋支社=京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町731京都銀行京都駅前ビル8階/Tel.075-353-1861
http://www.kirin.co.jp/

神仏への祈り

大倉治彦
月桂冠株式会社 取締役社長
大倉治彦

『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(グロービス経営大学院・著)と題した書籍では、数多くの長寿企業が神事・祭事・仏事を重要視していることが取り上げられています。
当社でも、特に酒造りの本格シーズンとなる秋冬には、多くの宗教行事を営んでます。11月、醸造の安全祈願のために、酒の神様として名高い松尾大社と梅宮大社へ参詣します。火伏せの神として知られる愛宕神社にも、愛宕山頂への山道を登って詣でます。また、当社の各酒蔵には、五穀豊穣(ほうじょう)、商売繁盛などの神様として信仰され、「おいなりさん」として親しまれる稲荷社を祀っています。稲荷社では、「お火焚(ひたき)祭」(11月)に稲藁(いねわら)を焚いて祈りを捧げ、2月2回目の午の日に「二の午(にのうま)」と呼ぶ神祭りを営みます。春・秋の彼岸には、本社隣の松林院で先輩社員の物故者法要を50回忌まで営みます。科学技術を取り入れ高品質の酒が醸されるようになった現代でも、神仏への祈りや感謝は欠かせないものとなっているのです。
私自身、出社前には本宅の仏壇に手を合わせて祈りを捧げます。仏壇の前で日々の仕事を報告し事業の発展をお祈りしていると、不思議と心が落ち着きストレス解消になります。科学が進歩し社会が合理的になっても、何かに祈るという気持ちを大切にしたいと考えています。

月桂冠株式会社
京都市伏見区南浜町247/Tel.075-623-2001
http://www.gekkeikan.co.jp/

進化し続ける「印刷」

木下宗昭
佐川印刷株式会社 代表取締役会長
木下宗昭

今年、当社は創業45周年を迎えます。あらためて振り返ると、この45年間の情報通信技術の進化はすさまじく、社会の変貌ぶりにも、大変驚かされるものがあります。
印刷コミュニケーションの世界も、大きな変化を遂げました。大阪万博で賑(にぎ)わった創業当時は、現在のようにインターネットによって、いつでもどこでも情報を取り出すことができるようになるなど、夢のまた夢でした。今や 1万ページを超すようなカタログの制作も、データベースを作成し、画像や校正のやりとりをネット上でいともたやすくできるような時代になってきたのです。
私は創業以来、何もないところから商品を生み出していく印刷の「ものづくり」に魅せられて、今日まで歩んできました。活版印刷から出版グラビア印刷に至るまで、さまざまな印刷領域を手掛け、多くのお客さまにたくさんのことを学ばせていただきました。配送伝票においてはバーコード印字の重要性を、カタログ作りでは正確なカラー再現の方法論を、旅行雑誌では誌面編集の楽しさや緻密なスケジュール管理を…。芸術(アート)から科学(サイエンス)に至るまで、印刷はまさに「学び」の宝庫でした。そして今も印刷は進化し続けています。
私たちは昨年末、種々のフィルムの精製から印刷・加工を行う軟包材事業を新たにスタートさせました。未知の領域への挑戦です。私たちも印刷を通じ、着実に進化していきたいと思っています。

佐川印刷株式会社
京都府向日市森本町戌亥5-3/Tel.075-933-8081
http://www.spcom.co.jp/

京都と駅伝(襷を繋ぐ)

田中秀典
サッポロホールディングス株式会社 代表取締役専務
田中秀典

「駅伝の発祥の地」を示す碑が京都三条大橋の袂(たもと)に佇む。今から98年前の1917年に「東京奠都五十年奉祝・東海道駅伝徒歩競走」が開催されました。
スタートは京都三条大橋、ゴールは東京・上野不忍池(しのばずのいけ)。その距離516キロ。一方、今に続く「箱根駅伝」は「東海道駅伝徒歩競走」からわずか3年後の1920年に起源を持ちます。
サッポロビール社は1987年に、この「箱根駅伝」の協賛を開始し、今年、29回目を迎えます。数々の名場面が甦(よみがえり)ります。今か今かと待ち受ける次区の走者に襷(たすき)を手渡すために、脱水症状で足に痙攣(けいれん)を引き起こしても、意識朦朧(もうろう)の蛇行走行に陥っても、沿道の声援、伴走する監督の激励に応え、必死の形相で走る選手たち。その姿に、幾度となく嗚咽(おえつ)を噛(か)み殺し声援してきました。
駅伝は、個人の力量を超克する「使命必達」を秘めた日本発祥の競技。文字通り、汗と涙が滲(にじ)んだ襷が次の走者に届いたとき、勝敗を超えた安堵と感動を覚えます。襷繋(つな)ぎの形容はさまざまな場面で惹句(じゃっく)されます。
1. 血:子へそして孫へ
2. 技:弟子に
3. 企業風土:次代を担う経営者に
新年早々、駅伝に見入りながら、私たちは選手を自分に重ね思います。誰に何を繋ぐために走るのか?そんな思惟(しい)の瞬間が訪れる不思議なドラマです。

サッポロビール株式会社
近畿圏本部 近畿統括支社 京滋支社=京都市下京区四条通東洞院東入ル/Tel.075-231-7177
http://www.sapporobeer.jp/