日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

地域社会との共生を目指して

大塚直樹
アサヒビール株式会社 京滋統括支社 支社長
大塚直樹

新年明けましておめでとうございます。
2015年、アサヒビールは創業126年、ニッカウヰスキーは創業81年を迎えます。昨年の節目の年を乗り越え、本年はより大きな飛躍の年にしたいと考えております。アサヒビールの創業者、鳥井駒吉とニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝はともに世界の最高水準の品質のビール・ウイスキーづくりに挑戦してきました。最高の品質でお客さまの満足を追求していきたいという創業の精神は、今も社員一人一人の心に受け継がれています。
創業の精神でもう一つ大事なことは、社会やお客さまに対して誠意ある心のこもった行動を取るということです。本年も、京都府の文化財保護活動への寄付や、滋賀県の琵琶湖の総合保全活動の応援、京都マラソンへの協賛、古典の日の推進活動への応援、祇園祭への鉾町としての参画などを通じて、地域社会への誠意ある貢献を続けていきたいと考えています。
「品質への挑戦」「心のこもった行動」という創業者の思いや起業の原点を常に忘れず、日々の活動に邁進していきます。そして、地域のお客さまにとって、なくてはならない会社を目指してまいります。

アサヒビール株式会社
京滋統括支社=京都市下京区水銀屋町612 四条烏丸ビル8階/Tel.075-212-6300
http://www.asahibeer.co.jp/

「今」を生きる心構え

千 宗室
裏千家家元
千 宗室

茶の湯の世界では「一期一会」の精神を以(も)って今を大切に生きることに重きを置きます。先々の不安ばかりに心を砕くのではなく、足下を見て進む今日の一歩一歩の積み重ねが明日をつくり、ひいては次の時代を築くことに繫(つな)がります。逆の視点から考えますと、私たちが今いる場所は父母や祖先方、師や先輩方がおられた場所です。何十年何百年と歴史を辿(たど)れば多くの先達が一つの時代を次の世代へと、上手に受け渡してくださったその連続のおかげで今があります。
近頃は何にでも即効性が求められるようになってきました。しかし、例えば食事にしても体の中でエネルギーへと変わるには時を必要とします。人間の体をいい方へ向かわせるには時間が掛かるものです。文化は、いわばサプリメント。すぐには効果が目に見えないとしても、続けていくうちに確実に未来のどこかで生きてきます。例えば何かの機会に小さな子へ心を込めた一碗(わん)を勧めたとしましょう。その子どもが美味(おい)しいと思ってくれるだけで、大人になってからの過ごし方にいくばくかの違いが出てくるはずです。私たちはたくさんの「過去」に対する恩返しとして、手渡された良き伝統を「未来」を担う次世代へ受け渡す責任を果たせればと存じます。

裏千家
京都市上京区小川通寺之内上る/Tel.075-431-3111
http://www.urasenke.or.jp/

お見送り

中西浩之
株式会社オンリー 代表取締役社長
中西浩之

今から38年前、創業者の中西浩一が京都・北山通に当社の第1号の紳士服店である「ONLY本店」を開業しました。
オープン当日、土砂降りの雨の中、最初のお客さまが来店され商品をお買い上げいただきました。それまでのオーダー紳士服店では、営業、採寸、仮縫い、納品、集金と、何度もお客さまの元へ足を運ぶのが当たり前だったのですが、自ら足を運んでくださるお客さまのありがたさが心に染み、感謝のあまり従業員一同で、店を出られたお客さまの姿が見えなくなるまでお見送りしました。
以来、今日までこの「お見送り」は一人一人の社員に受け継がれており、当社が掲げる行動理念である「感謝」につながっています。お客さまに対する感謝の気持ちから自然と生まれた「お見送り」は、時を経ても伝えたい気持ちであり、つなげたいこころです。
私は、昨年の11月に代表取締役社長を引き継ぎました。目まぐるしく変わる世の中に、よりスピーディーに対応するため、果敢に挑戦していかなければならないと強く感じています。ただ単に変革だけを求めるのではなく、守るべきことと変えていくべきこと、その両方の調和がお客さまに長く愛される企業やブランドには必要だと考えます。今後も企業理念の「感謝」の気持ちを大切にしながら、京都の地から変革に挑戦していきたいと思います。

株式会社 オンリー
京都市下京区烏丸通松原西入ル玉津島町303/Tel.075-354-4129
http://www.only.co.jp/

天空を眺めるとき

柿本新也
柿本商事株式会社 代表取締役社長
柿本新也

広い大地に雲がゆっくりと流れていく。そんな世界に私たちは生存していました。 ビルが乱立している世界の主要都市に今や空はありません。また時がゆっくりと流れることもありません。
しかし、私の心の中には、そういった時の流れと風景が未(いま)だに存在しています。
今やITの進化により世界各国の小さな村の歴史や文化まで共有できるようになったことは、ありがたいことです。
文明の発達によって世界観は変化しますが、歴史と文化は継承されます。
日本人は八百万(やおよろず)の神々と共存してきました。神は人々から信仰され、衆生は恩恵を受けます。それが各地の宝物になりました。地域にはまだまだ“信仰と恩恵”が存在しており、私はその歴史と地域文化に尊厳の念すら覚えるのです。
歴史と地域文化の本当の意味を理解することは、まさしく「ことばの力を感じる」ことにあります。その長い歴史の中で、今私たちは何をなすべきなのでしょうか。
昨年創設した『言の葉大賞』(一般社団法人言の葉協会)が、これから未来を担う若者たちに何を伝えていくべきか。私は自分自身を叱咤(しった)激励し、人生の中で私がやらなければならないことを考え実行するとき、まさに生きがいを感じるのです。

柿本商事株式会社
京都市中京区寺町通二条上ル/Tel.075-662-0131
http://www.kyoto-kakimoto.jp/

伝統を守りつなぐ「語り部」に

髙﨑秀夫
株式会社京都銀行 取締役頭取
髙﨑秀夫

「地域のため、京都のために、銀行員として地域経済発展への貢献はもちろんのこと、地域に脈々と受け継がれてきた良き伝統や文化を守りつないでいく『語り部』の役割を担えるように、自己研鑚(けんさん)してほしい」。私どもは、このように若い行員を激励しています。
京都は、かつて明治維新で東京に都が移り、人口が急減し輝きを失った時期がありました。しかし、「人づくり」と「物づくり」を旗印に、町衆が中心となって近代化に取り組むことで工業都市に変貌し、かつての輝きを取り戻しました。その伝統は今日まで見事に引き継がれ、世界に誇れる京都企業が大活躍しています。
一方で、京都は千年の昔、山紫水明の都、平安京として栄え日本文化・芸術の礎を築きました。これらは長い歴史の中で、それぞれの時代の人々の心のよりどころとして暮らしを支えてきました。
今、国内市場の縮小や人口減少などの厳しい環境変化を前に、私たちはあらためて、今日まで引き継がれてきた京都の良き伝統を再認識し、飛躍への原動力とするとともに、次代に伝えていかなければなりません。
この良き伝統を未来へ間断なく守りつないでいくことこそ、われわれ地域金融機関が担うべき大きな使命の一つであり、そのために「語り部」となる人材の育成に取り組んでまいります。

株式会社 京都銀行
本店=京都市下京区烏丸通松原上ル薬師前町700/Tel.075-361-2211
http://www.kyotobank.co.jp/

創設者の「思い」

大城光正
京都産業大学 学長
大城光正

2015年、京都産業大学は創立50周年を迎えます。創設者の荒木俊馬は、当時の国内外の不安定な情勢に憂慮して、正確な情勢判断力と豊富な国際感覚に裏打ちされた行動力を備え、世界の人々の平和と幸福に貢献する人材の育成という大きな志を抱いて大学開学に奔走しました。その創設者の「思い」は「建学の精神」に不変の理念として込められ、その後の歴代の学長によって受け継がれています。
しかし、創設者の「思い」を受け継ぎ、常に崇高な理念に基づいた人材の育成に注力することは並大抵のことではありません。特に、昨今の急速に進展する国際化・情報化社会において、社会の諸々の難題に果敢に挑戦する気概ある学生を育成することは至難の業と言えます。その実現に向けて日々悪戦苦闘する中、開学式典などでの創設者の言葉が収録された資料に触れるたび、精魂込めた創設者の「思い」が力強く私に迫ってきて、言い知れぬ勇気と自信を喚起させてくれます。
創立50周年を迎える節目に当たり、創設者の「思い」を再認識するとともに、その「思い」が今後も京都・洛北の地で燦然(さんぜん)と輝き続けるように、未来に向けて国内外で評価される大学作りを目指していきたいと思います。

京都産業大学
京都市北区上賀茂本山/Tel.075-705-1411
http://www.kyoto-su.ac.jp/

上質な時間・空間・人間(じんかん)の提供

奥村浩二
株式会社京都東急ホテル 総支配人
奥村浩二

円安、成長する格安航空市場、訪日ビザ発給要件緩和、2020年東京五輪・ パラリンピック開催決定などにより、一度落ち込んだ訪日外国人観光客が回復し、過去最高を更新し続けており、日本のホテル産業にも風が吹いてきました。しかし、それでも世界の外国旅行者数ランキングを見ると、日本は30位と韓国や香港にも劣っているのが現状です。
日本(京都)はこれだけ豊かな自然や、洗練された伝統文化、世界無形文化遺産に登録された「和食」などがあり、観光資源の豊富さでいえば世界でトップクラスであるはずなのに、なぜ、まだまだ観光立国になりきれていないのでしょうか?
そうなるためには、外部環境が整ってきた今だからこそ、今一度、われわれホテル産業が忘れかけていた原点である「おもてなしの心」を取り戻すために、一流の旅館経営をお手本として、お客さまに上質な「時間」(心の底から和らぐことができる時間)、「空間」(四季の移ろいが感じられる、凛としたたたずまい)、「人間(じんかん)」(心地よい間合いを生み出すさりげない気遣い)を提供していきたいと思います。買い物だけのために訪日される観光客だけではなく、本当に日本(京都)の文化を好きになっていただいた、リピーターのお客さまをたくさん増やしていくことが、われわれの使命であり、観光立国への近道だと感じています。

株式会社 京都東急ホテル
京都市下京区堀川通五条下ル柿本町580/Tel.075-341-2411
http://www.kyoto-h.tokyuhotels.co.jp/