日本人の忘れもの 知恵会議  ~未来を拓く京都の集い~

子どもたちに 輝いて見えた働く姿

柿野欽吾
学校法人京都産業大学 理事長
柿野欽吾

戦後、それも昭和生まれの子どもは、親だけでなく近隣の現場で働く人の姿を見る機会がまだまだ多くありました。建築現場の大工さんや町の八百屋さんのように、あちこちで職人さんなど働く人を尊敬と憧れの眼差(まなざ)しで見て、汗・技・知恵を学び育ったといえば、大げさでしょうか。また、家業がモノづくりの場合、朝早くから夜遅くまで両親の働く姿は、その子女だけでなく近所の仲間たちも遊びに行けば垣間見ることができました。
しかし、高度成長期を経て平成になり、働く場が大規模化し、同時に自動化・省力化が進むと、家業の父母はもとより多くの人の働く現場やその姿が見られなくなりました。例えば、預貯金や送金はスーパーなどの身近なATMコーナーで済ませるようになりましたし、また、商店街の多くはシャッター通りになり、工事現場もフェンスに囲まれてしまいました。モノづくりも転廃業か、職住分離が増えました。
「真似る(まねぶ)」と「学ぶ(まなぶ)」は同じ語源であるといいます。残念ながら、今や子どもたちの身近から真似たり学んだりすることのできる、働く現場や姿は少なくなってしまいました。それを小中学生などへの出前授業やフィールドワーク、職場体験で復活させようとの取り組みは大いに賛成です。子どもたちがモノづくりや商いの面白さ、大変さを体感する機会をもっともっと増やしたいものです。

学校法人 京都産業大学
京都市北区上賀茂本山/Tel.075-705-1411
http://www.kyoto-su.ac.jp/

観光立国の 中核をなすもの

福島節雄
京都東急ホテル 総支配人
福島節雄

東急(東京急行電鉄)が初のホテル経営に乗り出したのは1954(昭和29)年以降ですが、東急がなぜ、ホテル事業を始めたか。
「戦後復興を成して物の充足がなされた。しかしながら、このまま物質的に豊かになっても文化的な真の豊かさは得られない。そのためには、世界との共通を持たなければならない。それはコミュニケーションを通じて醸成できる場を設けなければならない。政府にはまだできない。われわれが次代のために、そのコミュニケーションができる場(ホテル)を創出する(平和な国際社会における観光立国の柱はホテル産業)」これが創業の精神でありました。今また「観光立国」の実現が、国のソフトパワーを強化するもの、経済活性化の切り札などとして求められています。ソフトパワーを強化する、その中核の役割を担うのは京都でしょう。
1200年の都の重み、古(いにしえ)から現代まで築き上げてきた人々の矜持(きょうじ)、京都は普遍的な価値あるものに満ち溢れています。祈り・敬い・慈しみ、京都の美しさ、また、歴史を知るにつれ、人を知るにつれ、つくづくそう実感いたします。いまだ紛争の絶えない世界、京都をより深く知ってもらうことは世界平和に資することにもなるのではないかと、そのためにも歴史・文化をよく知り内外の旅客を温かくもてなすことは、私たちの大事な務めと思っています。

京都東急ホテル
京都市下京区堀川通五条下ル柿本町580/Tel.075-341-2411
http://www.kyoto-h.tokyuhotels.co.jp/

「食のブライトン」へ さらなるチャレンジ

爪川 治
京都ブライトンホテル株式会社 代表取締役社長
爪川 治

昨年3月に京都ブライトンホテルの社長に就任し、千葉県舞浜から、長い歴史を持つこの地にまいりました。
京都という世界的な観光地でのビジネスは私だけでなくオリエンタルランドグループにとっても初めての経験であり重要なチャレンジです。さまざまな不安を抱きつつスタートした私たちを温かく迎えてくれたのは、開業以来このホテルを愛してくださるたくさんのお客さまと、ホテルを支えてきたスタッフたち。京都を代表する各界の皆さまからも多くのご支援をいただいており、まさに京都に育てていただいたホテルだと深く感銘を受けたことを思い出します。お客さまからは、常々「ブライトンにはこうあってほしい、こうあるべきだ」という熱いお言葉を頂戴します。中でも、「食」に対しては大きなご期待をいただいていることを痛感しています。「食のブライトン」と表現してくださることも多く、うれしくもあり、重責であるとも感じています。
ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食;日本人の伝統的な食文化」が脈々と継承される京都で、私たちにできる「食」の発信とは何か。食を囲み、お客さまに笑顔になっていただくことこそが、私たちの喜びです。これまでに培った「食の安心・安全」に対する経験を最大限発揮し、美食と歴史が融合する都市である京都の一員として、食文化発展の一翼を担うことが出来ればと思っております。

京都ブライトンホテル
京都市上京区新町通中立売(御所西)/Tel.075-441-4411㈹
http://www.brightonhotels.co.jp/kyoto/

伝統は未来のために

平岩孝一郎
株式会社京都ホテル 代表取締役社長
平岩孝一郎

2013年は、京都ホテルグループにとりまして創業125周年という節目の年でありました。1888年に「京都常盤―KIOTO HOTEL―」としてスタートした京都ホテルは、国内外から数多くの賓客や文化人を迎えてまいりました。文明開化の頃とはいえ、西洋スタイルで歓待するのは並大抵のことではなく、毎日が新しい試みの連続であったと思われます。文化が集積し伝統が息づく京都だからこそ、新しいことに挑戦できる土壌が形成されていたのでしょう。
こうした創業期の気概は今も受け継がれています。京都では珍しく東山・北山・西山とパノラマ状に広がる景色が眺められる16階エグゼクティブフロアには、私ども一押しの客室をご用意しておりますが、これらを昨春、和と洋の意匠がマッチングした斬新かつ伝統的なものに大幅改装いたしました。また、本格的なフレンチや鉄板焼から気軽なダイニング、カフェまで楽しめる複合レストラン「ザ・ガーデン岡崎」の開業、史蹟・一之舩入(いちのふないり)をのぞむレストラン「ラ・テラス了以」の移転開業、毎月多彩な出演者を迎えるイベントの開催など、皆さまに驚きと笑顔を提供できるホテルを目指して、チャレンジしております。
京都で現存する最も歴史あるホテルとして、お客さまとの出会いにより育まれてきた伝統と革新を、未来へと受け継いでまいります。

株式会社 京都ホテル
京都市中京区河原町通二条南入一之船入町537-4/Tel.075-211-5111
http://okura.kyotohotel.co.jp/

これからも京都・滋賀の 皆さまとともに

横山良範
キリンビールマーケティング株式会社 京滋支社 支社長
横山良範

平素はキリングループ商品をご愛飲いただき、誠にありがとうございます。また、昨年はご当地京都の皆さまのご尽力もあり、「和食;日本人の伝統的な食文化」のユネスコ無形文化遺産への登録が決定いたしましたこと、心よりお慶(よろこ)び申し上げます。                 弊社の「キリン一番搾り」で採用しているまじりけの無い麦汁のみをろ過・抽出する製造工程は、和食の基本である澄み切った「一番だし」を引く技法と発想は同じです。
また、京都・滋賀で生産されるビール大麦は、全数弊社との契約栽培となっております。
私たちキリングループは1907年の創業以来、お客さま本位・品質本位の理念の基、さまざまな新しい価値を生み出すことにチャレンジしてきました。特に、ビールをはじめとする飲料の分野において、キリンにしかできない工夫でお客さまや社会に元気と潤いを広げていくことが、私たちの使命だと考えております。
新しく迎えた年もキリンビールを、地元の商品と思っていただき、京都・滋賀の皆さまに「おいしおすえ」「おいしが(滋賀)」と仰(おっしゃ)っていただけるよう、元気で潤いのある情報を発信し続けたいと思います。
皆さまのさらなるご支援をお願い申し上げますとともに、本年が皆さまにとりまして素晴らしい一年となりますよう、祈念申し上げます。

キリンビールマーケティング株式会社
京滋支社=京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町731
京都銀行京都駅前ビル8階/Tel.075-353-1861
http://www.kirin.co.jp/

未来に残したいもの

加藤好文
京阪電気鉄道株式会社 代表取締役社長
加藤好文

緑の大地、
澄んだ空気、
おいしい水。


太陽、月、北極星。
富士山、桜、菊。
春、夏、秋、冬。
ローマ、パリ、京都。

童謡、唱歌、演歌。
雨上がり、夕涼み、秋の夜長。
初詣、送り火(お盆)、除夜の鐘。

花見、芋煮会、紅葉狩り。
お祭り、盆踊り、厄払い。
着物、下駄(げた)、扇子。

慎み、恥じらい、健気(けなげ)。
恥の文化、矜持(きょうじ)、奥ゆかしさ。

松茸(まつたけ)、伊勢エビ、ズワイガニ。
すし、うなぎ、すき焼き。
ビール、日本酒、ワイン。

勤勉、倹約、安全で正確な鉄道。

京阪電気鉄道株式会社
大阪市中央区大手前1丁目7番31号/Tel.06-6944-2521
http://www.keihan.co.jp/